建設業に従事する方は、工事中に事故が起こるリスクについて一度は考えたことがあるのではないでしょうか?
工事現場には重機なども多く、事故が起こった場合には被害が大きくなる可能性が高いです。その上、自社の従業員だけでなく、通行人などの第三者にも被害が及ぶこともあり、リスク管理は徹底したいところでしょう。
建設業のリスクに備えるためには、建設業総合保険が有効です。
今回は、建設業に従事する方に向け、建設業総合保険の特徴や補償内容、つけられる特約から加入時の注意点について解説します。
万が一、工事中に事故が起こったら、その被害は計り知れないものです。事故が起こった際のリスクを少しでも減らしたい経営者の方は、ぜひこのページをお読み下さい。
どんな保険?建設業総合保険の特徴とは
建設業総合保険は、建設業に関わる会社にとって強い味方となる保険です。
建設業総合保険の主な特徴は2つあります。
1つ目は、建設業に関するリスクを広くカバーしている点です。
建設には、現場での工事が伴います。工事中に事故が発生した場合に問題となるのは、通行人や作業員などの人的な被害の発生です。
また、建設中の建物などだけでなく、第三者の財産まで被害が及ぶこともあり得ます。
建設中の事故によって生じる損害は、工事を請け負っていた会社が損害賠償責任を負うことになる可能性が高いです。
建設業総合保険に加入しておけば、工事に関する賠償リスクを広くカバーしてくれるため、安心して工事ができます。
また、特約をつけることによって、さらに幅広い補償を得ることも可能です。建設業総合保険の特約については、後ほど詳しく説明します。
2つ目の特徴は、工事中だけでなく工事完了後に発生した賠償責任も補償される点です。
無事故で工事が完了したからといって、工事に関するリスクがすべてなくなったわけではありません。工事の不備が原因となって工事完了後に事故が発生することもあります。
そういった場合も、建設業総合保険の補償対象となります。
似ている建設業向けの保険
建設業総合保険と似た保険として、建設工事保険や組立保険、土木工事保険が挙げられます。
名前を聞いただけでは、とりあえず全て工事関係というような印象で、違いが分かりにくいでしょう。
それぞれの保険について、簡単にご説明します。
建築工事保険とは、住宅やマンション、オフィスビルなどの建設工事中に発生する事故を補償する保険です。不測かつ突発的な事故を対象としています。
組立保険は、工作機械や橋、各種機械設備などの組立や据付工事中に発生する事故が対象の保険です。
土木工事保険については、上下水道工事や道路工事、地下鉄工事などで発生する事故が補償対象になります。
以上のように、これらの3つの保険は、それぞれ対象となる工事の範囲が限られています。
特定の工事しか行わない業者であれば、どれか1つに加入することで十分な補償を得ることが可能です。
一方、さまざまな工事を行う可能性がある業者の場合は、保険の対象となる工事が限られていると、補償を受けられないケースが生じるため、リスクをカバーしにくくなります。
そういう場合は、やはり建設業総合保険が良いでしょう。建設業総合保険は、建築工事・組立工事・土木工事のすべてをカバーしています。
建設工事について広く手がけている業者は建設業総合保険へ、特定の工事のみ扱っている業者は、事業内容にあった保険を選んで加入を検討してみて下さい。
建設業総合保険で補償されるケース
さて、建設業総合保険がどんな保険なのか、基本的なことはお分かりいただけたかと思います。
ここからは、建設業総合保険でどんな補償を受けられるのかについて、説明していきます。
建設業総合保険で得られる補償を理解するためには、いくつかの事例を把握しておくことが有効です。
事例1:工事作業中に第三者の財産に損害を与えたケース
こちらは、具体的には「足場が崩れて隣のビルを破損させた」というケースが建設業総合保険の対象になった事例です。
このケースでは、工事と関係ない第三者の財物であるビルが損害を受けていることになります。そうなると、損害についての賠償責任が発生し、賠償金の支払いが必要です。
こういった場合に、賠償金相当の保険金を受け取ることで補償を受けられます。
事例2:資材運搬中に第三者の財産に損害を与えたケース
具体的には、「資材運搬中に駐車中の第三者所有の車両を傷つけてしまった」という事例です。
このケースは、工事作業そのものではなく、工事に付随する運搬作業中に事故が発生しています。
工事に関連する作業による事故で他人の財物に損害を与えた場合であっても、建設業総合保険の補償対象になります。
事例3:工事後に第三者に損害を与えたケース
こちらは、「看板取りつけ工事後、その取りつけ作業に不備があったため看板が落下して通行人がケガをした」というケースです。
このケースのポイントは、工事が完了したあとで事故が発生していることです。
工事完了後であっても、工事内容に起因する事故による損害賠償であれば、建設業総合保険の補償対象となるので、覚えておきましょう。
補償内容
先ほど、建設業総合保険が適用された事例をいくつかご紹介しました。
ここからは、建設業総合保険の補償対象となる内容について、更に詳しくご説明していきます。
建設業総合保険では、主に11項目について、補償を受けることができます。
人格権侵害・広告宣伝侵害補償
1つ目は、人格権侵害・広告宣伝侵害補償です。
広告宣伝活動や不当行為によって名誉棄損やプライバシーの侵害が生じた場合に補償されます。
該当する事例としては、工事現場で第三者を資材の盗難者と誤認して拘束し、名誉棄損で訴えられた場合などがあげられます。
使用不能損害拡張補償
次は、使用不能損害拡張補償です。
他人の財物を使用できない状態にしてしまった場合に補償されます。
具体的な例を挙げると、店舗外装工事中に、誤って配線を切ってしまう作業ミスのために店舗が休業したことによる休業補償などが対象となります。
借用財物損壊補償
3つ目は、借用財物損壊補償です。他人から借りた財物を損壊させたことによる損害を補償します。
工事会社の場合は、リース会社から重機を借りることが多いでしょう。借りた重機を壊してしまった場合などに、建設業総合保険で補償を受けられます。
管理財物損壊補償
4つ目は、管理財物損壊補償です。作業を行う対象となる物を損壊させた場合に補償されます。
例えば、ドアの取りつけ作業中に建物を壊してしまった場合などが該当します。
施設修理等危険補償
施設修理等危険補償は、施設の修理などが原因で発生する事故の損害を補償します。
こちらは、ビル修理中の工具落下事故で、通行人がケガをした場合などが該当します。
昇降機危険補償
6つ目は、昇降機危険補償です。昇降機には、エレベーターだけでなく、エスカレーターも含まれます。
エレベーターのドアが故障して顧客が挟まれた場合などが補償対象です。
工作車・施設内専用車危険補償
7つ目は、工作車・施設内専用車危険補償です。
パワーショベルなどの工作車・施設内専用車が原因で発生した事故の損害を補償してくれます。
漏水補償
次は、漏水補償です。施設の給排水設備からの漏水事故損害をカバーできます。
自社ビルの配管からの水漏れで階下の事務所に損害が発生した場合などに、補償を受けられるでしょう。
雨漏り等補償
9つ目は雨漏り等補償です。雨が吹き込んだことが原因で階下に損害が生じた場合などに補償を受けられます。
雨の侵入経路は、屋根や扉、窓、通風孔などで、雨だけなく雪による被害も補償の対象になります。
生産物・仕事の目的物損壊補償
10つ目は、生産物・仕事の目的物損壊補償です。
例えば、ガス管工事の不備によりガス漏れ爆発となった場合、爆発の影響でケガをした人に対する補償とガス管そのもの損害に対する補償をしてくれます。
リコール費用補償
最後は、リコール費用補償です。
欠陥がある建築資材の販売などにより、工事現場で使用したユーザーがケガをした際には、製品回収や無償修理などのリコールが行われます。
建設業総合保険は、このリコールに関する費用を補償します。
以上の11項目が、建設業総合保険の保障内容です。
この11項目は、建設業総合保険の基本的な補償内容となっており、この範囲以上に補償を求める場合には、特約を付ける必要があります。
次の章で、建設業総合保険につけられる特約について説明します。
保険につけられる特約
建設業総合保険は、特約をつけることによって補償範囲を広げることが可能です。自社の状況に合わせて、必要な特約があればつけておくようにしましょう。
主な特約は、6つあります。
使用者賠償責任補償特約
まず、使用者賠償責任補償特約です。
この特約を付けると、会社が労災事故の発生により従業員に対して損害賠償責任を負った場合に補償を受けることができます。
会社として支払う損害賠償金だけでなく、役員が負担する責任分についても対象となることが特徴です。
雇用慣行賠償責任補償特約
2つ目の特約は、雇用慣行賠償責任補償特約です。
従業員に対するハラスメントや、不当解雇などによって会社や役員が負担する損害賠償責任が補償されます。
借用不動産損壊補償特約
次に、借用不動産損壊補償特約です。
借用不動産が損壊した場合は、借り主は貸し主に対して賠償を行う必要があります。この損害賠償責任をカバーしてくれるのが、借用不動産損壊補償特約です。
例えば、店舗として使用するために借り受けていた建物で火事を起こしてしまった場合などが、この特約の補償対象になります。
地盤崩壊危険補償特約
4つ目は、地盤崩壊危険補償特約です。
土地の沈下や地下水の増減などによって地盤崩壊が生じ、その地盤上の工作物などが損壊した場合の損害について、補償を受けられます。
例えば、土地掘削工事中に地盤が崩れて周辺住民の建物が損壊した場合などが、この特約の補償範囲に該当します。
工事物損壊補償特約
5つ目は、工事物損壊補償特約です。
この特約では、建築工事や組立工事、土木工事など工事の種類に関係なく、対象工事の目的物などについて発生した損害が補償されます。
例えば、建築中の住宅が火事で焼失したり、工事現場内で保管していた工事用資材が盗まれたりした場合に、この特約をつけておけば補償を得ることが可能です。
先程紹介した4つの特約とは異なり、物の損害を補償することが特徴になります。
財産補償特約
6つ目は、財産補償特約です。この特約も、物の損害を補償します。
こちらは、不測・突発的な事故によって、補償を受ける対象となる法人が所有・使用する施設内にある設備や什器、備品、資材などが損害を受けた場合の補償特約です。
火災による什器・備品の消失や、事務所のプリンターなどの盗難などが補償対象となります。
以上の6つが、建設業総合保険につけることができる特約です。
特約をつければ、従業員に対するハラスメントや不当解雇についても補償の範囲を広げられることがポイントでしょう。
自社の事業やよく取り扱う工事内容などを改めて確認して、どの特約をつけたほうがいいのか考えてみて下さい。
加入する場合に注意すべきこと
建設業総合保険は、建設業を営む会社にとって広く有効な保険ですが、加入するにあたって、注意すべき点が2つあります。
まず、補償対象が建設業務と関連して発生する事故による賠償責任などに補償が限られることです。工事と関係なく発生する損害については補償されない可能性があるため、注意しましょう。
契約時、「具体的にどんなケースについて補償が受けられるのか」を保険代理店の担当者に詳しく確認しておくことが重要です。
補償内容を把握できていないと、補償されると思っていた内容について補償されなかった、もしくは保険金請求できるケースでも請求漏れが発生してしまう可能性があります。
2つ目の注意点は、加入対象業者が限られることです。
基本的には、建設業者でないと加入できません。建設業にまったく関係のない事業者は、工事を業としていないため、加入の対象外となります。
加入対象が建設業者に限られている理由は、建設業総合保険の仕組みにあります。
建設業総合保険は、建設業者が事故を起こす確率から保険金支払額を求め、保険料を設定する仕組みです。工事を行うことを本業としている業者以外が加入すると、想定している事故率とは異なる発生確率で事故が起こることになります。
そのため、建設業者しか加入できないのです。建設業者以外は、別の保険に加入してリスク軽減を図るようにしましょう。
保険加入のメリット
さて、建設業総合保険の補償内容について説明してきましたが、いかがだったでしょうか?
建設業総合保険への加入を検討しようかと思い始めた方もいらっしゃるかもしれません。
ここで改めて、建設業総合保険の主なメリットを再確認しておきましょう。
主なメリットは、3つあります。
最初のメリットは、損害賠償請求を受けるなど損害が生じた場合に保険金という形で補償を受けられることです。
工事が原因による損害賠償金を支払うと、その分だけ会社の資金は減少してしまいます。必要な資材の購入や機材の入手が困難になり、営業が継続できなくなる可能性も否定できません。
最悪の場合は、賠償金の負担によって資金不足になり倒産することもあります。
建設業総合保険に加入しておけば、賠償金などの支払いに必要な資金を損害保険金として受けられることがメリットです。
次に、保険への加入によって安心して業務を遂行できるようになることが挙げられます。
現場で働く作業員や管理者は、事故が起こって賠償請求を受けると会社の存続が危ぶまれるという状態では安心して働けません。
建設総合保険に加入すれば、そういったリスクに対して少なくとも経済的な備えをしておくことは可能になるため、安心して仕事ができる環境を得ることができるでしょう。
最後のメリットは、建設業としての信用を守れることです。
工事中の事故の最小化が大事であることは、言うまでもありません。しかし、どんなに対策をしていても事故の発生をゼロに抑えることは難しいでしょう。そのため、万が一の事故に備えて保険に入るという姿勢は欠かせません。
保険に加入して事故に備えることは、建設業者としての責任を果たすことにつながります。その結果、業界や社会から信用される会社になれるでしょう。
建設業者なら建設業総合保険に加入しよう!
どんなに安全管理や作業管理がしっかりしている建設業者でも、事故を完全に防ぐことはできないでしょう。万が一、事故が発生した場合の賠償責任を果たせるための備えをしておくことが重要です。
そのためには、建設業総合保険に加入することが有効になります。
建設業総合保険に加入することによって、事故が発生した場合でも他者とのトラブルを避けることができます。
また、保険に加入することで信用が得られ、現場で働く人も安心して働けるようになるメリットもあります。
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