※当記事での法人保険の保険料の損金算入割合等の税務上の扱いに関する記載は、2018年12月以前の国税庁の通達を前提としております。
2019年4月11日に国税庁が新たなルール案を公表しており、今後意見公募(パブリックコメント)の手続を経て、新しいルールによる運営が行われることになっております。詳細は国税庁・金融庁・各保険会社が公表する内容をご参照ください。
なお、当サイトでも新ルールの内容につきましては「【節税保険が販売停止】国税庁の新ルールを解説」で詳しく解説していますので、ご確認下さい。
※2019年6月25日更新 法人契約のがん保険や医療保険について、全額損金算入できる保険料の範囲が1契約当たり年間30万円までに制限される可能性があります。
会社経営が軌道に乗り、利益も順調に上げられてきた頃に経営者の悩みとなって現れるのが「法人税」です。
「できるだけ法人税の支払いを抑えたい…」というのは、どの経営者でも考えることでしょう。
平成30年度現在、法人税率は約30%に設定されています。
つまり、税金対策を行っていない場合は、収益の約3分の1もの金額を法人税として支払わなければならないということです。
もし、しっかりと企業で税金対策を行い法人税の額が押さえることができれば、会社にキャッシュが残ります。会社にキャッシュがどれだけ残るかというのは、その後の経営に大きく関わることです。
今回は経営者の悩みである法人税の問題に関して、多くの中小企業が行っている12個の税金対策法を順に紹介していきます。
もし法人の利益が出過ぎてしまったら?
通常、個人も法人も得た収入に対して税金が課せられます。税金と聞けば、誰しも支払う額を減らしたいと考えますよね。
とは言うものの、法人税の場合、仮に「売上の入金を法人用の口座ではなく別の口座に振り込んでもらおう」、
あるいは「従業員が沢山いることにして人件費を余計に計上してしまおう」と考えたとします。
これらの行為は、結論から言うと脱税行為になるわけですが、税務署の目はそれを見過ごすほど甘くありません。
税務署は事業主(経営者)の口座情報を集めることができるので、法人の帳簿に無い入金記録を指摘するのは簡単です。
また、人件費の架空計上も同業他社の人件費と比べて割高になっているのは容易に調べられます。不審な点があれば、税務署は従業員の源泉徴収帳簿や採用時の履歴書、タイムカードなどの提出を要求し、矛盾点を指摘できます。
以上のような脱税行為を行うと罰金もありますし、手口が悪質と判断された場合は重加算税として一番重い罰金を支払うことになります。通常払うべき税金の約1.5倍もの金額を支払うケースもあるので、くれぐれも脱税行為は行わないようにしましょう。
不必要な物を購入するのは本当の意味での税金対策ではない
そもそも税金対策とは、税制上のシステムを活用し、無駄を省いて適切な税金額を支払うようにするということです。
この税制を守らず、法人税の支払いを逃れようとするのは先ほども言った通り脱税行為であり犯罪です。脱税行為は、法律の範囲内で支払う税金を少なくする税金対策とはまったく異なります。
そこで、多くの経営者の皆様が税金対策をするにあたっては、以下の2つの税制システムを活用することになります。
控除を利用する方法
1つ目は、控除の利用です。控除とは課税対象となる所得金額から、一定の金額を引くことができる税金対策です。
控除には様々な項目があり、所得に適用される基礎控除、生命保険料控除、小規模共済等掛金等控除などが挙げられます。
法人がこの控除制度を利用する場合には、従業員の人数や給与面を条件に判断されることもあるので、自分の会社が控除制度に適応されているかどうかを決算前にはあらかじめ確認しておきましょう。
ただし、会社の運営状況によって利用できる控除は限定されているため、大きな税制上のメリットが得られない場合もあります。
損金を計上する方法
2つ目は、損金(費用)を計上して会社の所得金額を減らすという方法です。
特に法人の場合は税制上のメリットを得られやすい方法だといえるでしょう。
しかし、無計画なまま費用計上を行うと、会社の資産を減らす可能性も持っています。
たとえば、「会社の収益にかかる税金を少しでも安くしたい」と思い、不必要な設備投資を行ったとします。設備投資をして税金を抑えることができたものの、生産性には何も影響を及ぼさず、収益を向上させることはできませんでした。
このような状況になると、法人税を減らすために会社の資産を減らしただけになってしまいます。
税金対策には、会社の経営に「効果的なもの」と「効果的でないもの」があります。重要なのは、会社の利益を高めながら税金対策を行うことです。
正しい方法で税金対策の効果を図ることが大切だということを意識しましょう。
それでは、さっそく法人税の税金対策の効果がある12の方法をご紹介します。
代表的な法人の税金対策12選
法人が行える税金対策にはどのようものがあるのか、今回は厳選して12個紹介していきます。
代表的な法人の税金対策12選
- 役員報酬を利用する
- 決算賞与を利用する
- 不要な固定資産を処分する
- 設備投資を行う
- 人材へ投資する
- 不動産や中古車の減価償却を利用する
- 出張手当を活用する
- 福利厚生費を捻出する
- 社長(または家族)所有の不動産を法人に貸付する
- 別会社を設立する
- 中小企業向けの共済に加入する
- 法人向けの生命保険に加入する
1.役員報酬を利用する
まず紹介するのは、役員報酬を利用した節税方法です。役員報酬とは、簡単に言うと「社長が受け取る報酬」のことを意味します。
役員報酬は税務上で損金として算入できるので、会社の所得を減らすことができます。そのため、税制上のメリットが得られるのです。
ちなみに、損金とは税務上の用語ですが、会計上で考えれば費用や経費となります。つまり、役員報酬の大きさを経営者自身が決めることで、その分の金額の税金対策ができると言うことです。この方法は、中小企業の税金対策では初歩的なものになります。
ただし、損金として算入するには「定額同額給与」と言って、毎月同額の応酬を支給する必要があります。決算間際に利益がかなり出たからと言って、その時期だけ役員報酬を多くしても税制上のメリットは得られません。
2.決算賞与を利用する
この税金対策は、従業員のモチベーション向上にもつながり、さらに税制上のメリットもある一石二鳥の方法です。
従業員への臨時のボーナスとして決算賞与を活用します。
注意点をあげるとすれば、決算賞与を税金対策として利用するには次の3つを満たしていなければなりません。
- 事業年度度終了までに従業員全員に賞与額を伝える
- 翌事業年度の最初の1ヶ月以内に支給する
- 決算賞与の額を未払金として経費に計上している
特に重要なのは、2つ目の「翌事業年度の最初の1ヶ月以内に支給する」です。
仮に1ヶ月以内に決算賞与の支払いをしていない場合、決算賞与として設定した金額は経費として認められなくなるのでご注意ください。
最後に、決算賞与を支払えば当然、法人のキャッシュは少なくなります。決算賞与を支払った後の会計バランスにも気をつけましょう。
3.不要な固定資産を処分する
社内で使わなくなった固定資産を処分することも、税金対策のひとつとして挙げられます。特に購入時の価格が高いものであれば、固定資産除却損として長期的な税制上のメリットを得ることができます。
さらに、不要な資産を処分するということは、固定資産税を減らすことにも繋がるので、固定資産の見直しは重要だと言えるでしょう。
帳簿上では資産といっても、保有する建物や土地を維持するためにはそれなりのコストがかかります。損金として計上できる除却損の中には、建物などの取り壊しに必要になった費用も含めることができます。
すぐに取り壊しができない場合には、現状のままで除却する「有姿除却(ゆうしじょきゃく)」といった方法もあります。この場合、現在の資産価値から処分見込額を差し引いたものを、固定資産除却損として経費扱いすることができます。
注意点としては、除却損を計上するためには「今後一切資産の使用がない」ことが条件となる点です。一時的に使っていないと言うだけでは、除却損として認められないので気を付けましょう。
繰越欠損金
固定資産を処分すると言うことは、除却損を作り出すのと同時に、多額の繰越欠損金を生み出すことにも繋がります。
仮に、1,000万円の欠損金が発生したならば、数年間は欠損金と同額の利益が相殺されることになるため、中期的な意味でも税金対策の効果を高めることができるでしょう。
会社にとっての固定資産を圧縮することは、財務的な面でもプラスに働きます。
土地や建物などの金額の大きな資産を処分することによって、会社のバランスシートはスリム化し、対外的に信用の得られる財務体制を築くことが可能です。
4.設備投資を行う
年度内で法人に過剰な利益が発生したら、今後の企業発展のために設備投資を行うのも税金対策の1つです。
期限などの規定はありますが、設備投資にかけた設備費の一部は法人税から控除されます。
法人税を控除される設備投資の例
- 「最新モデル」であると証明を受けた機械装置1台160万円以上のもの
- 工業設備品は1台120万円以上または30万円以上のもの、合計が年間120万円以上
- 建物や構築物も対象になり、120万円以上または60万円以上のものの、合計が年間120万円以上
これらの場合は、控除税額が取得額の4%、建物や構築物であるならば2%となる場合があります。
ほぼ全ての業種が対象となるのは、機械などの取得です。具体的に言うと「新品で」、機械装置1台「160万円以上」のものなどです。この場合の控除税額は取得価額の7%となっています。
他にも、製造業や建設業以外の業種が対象となっている経営改善設備の取得も、控除税額が7%になる場合があります。(新品で認定経営革新等支援機関からの指導や助言を受けて取得したもの)
5.人材へ投資する
設備投資とともに考えたいのが、人材への投資です。普段から会社のために働いている従業員の給与を上げることや、社員数を増やすことは結果的に税金対策の効果をもたらします。
また、従業員の給与をアップさせた場合、「所得拡大促進税」が適用され、引き上げた金額の10%が法人税から減額される場合があります。
従業員数の場合も一定数まで増やした場合には、「雇用促進税制度」の適用で増えた人員数に40万円を掛けた金額を法人税から減らすことができる可能性があります。
それから福利厚生の一環で社宅を用意する、もしくは社長宅を社宅扱いにするのも税金対策の効果があります。
もし、賃貸物件に住んでいるのであれば、社長個人名義で物件の契約をするのではなく、法人名義で契約をするだけです。
契約の名義を法人にするだけで、家賃の50%から70%を経費にできるケースがあります。20万円の家賃であれば半額の10万円以下になるのですから、かなりお得に住める計算です。(床面積が木造で132㎡、木造以外で99㎡を超える場合は別の計算)
- 給与や従業員数を増やし「所得拡大促進税」「雇用促進税制度」を利用する
- 社宅を用意し、管理・維持費用や家賃の一部を損金に算入する
6.不動産や中古車の減価償却を利用する
会社で使う不動産や社用車は経費として落とすことができますが、減価償却と言って特別な計上をする必要があります。
土地や建物、自動車は固定資産となるので、それぞれに「これぐらいの年数は使えるだろう」と国が定めた耐用年数の期間が存在します。定められた耐用年数と購入費を照らし合わせて、減価償却費を割り出し、損金に算入することができるのです。
車を買うなら中古車がいい?
車の場合、新車の普通車ならば耐用年数は6年となり、購入した際の支払い総額が6年分の分割で経費になるので、税金対策という観点ではさほど効果は見込めません。
ところが、4年落ちの自動車であれば1年で全額が経費となります。
よって、新たに社用車を購入する場合や社用車の買い替えを検討する場合、4年落ちの中古車を購入した方が税金対策の効果が期待できます。
注意点を挙げるとすれば、事業年度の途中で中古車両を購入すると購入した日から事業年度の終わりまでの期間しか経費になりません。今期の利益の見込みがある場合なら、すぐに4年落ちの中古車を購入するのが得策です。
7.出張手当を活用する
営業会社など遠方への出張が多い会社であれば、「出張日当」を経費として支給できます。そして、この「出張日当」は損金として算入することができるので、税制上のメリットを得ることができます。
ただし、法人で旅費規程を作っておかないと適用できないので、役員や従業員が出張に行った際には事前に日当を支給する規定を盛り込んで作成しておきましょう。
出張手当は、多くの人が「経費として扱えるもの」だとイメージできると思いますが、他にも大きなメリットがあります。
例えば、役員が出張手当を貰うとなると、手当自体はポケットマネーとなって個人の所得扱いになりません。分かりやすく言えば、会社から貰ったお金に税金が掛からないのです。さらに手当は消費税の課税対象となるので、会社が負担する消費税が低くなります。
高額な出張日当の支給は、税務署から経費として認められない可能性が出てきますが、1日に2万円程度であれば問題なく支給することが可能です。
8.福利厚生費を捻出する
こちらの税金対策は社員のモチベーション向上に繋がるものです。
福利厚生費は、税法上でも「役員・従業員の福利厚生費を目的として、給料・交際費以外の間接的給付を行うための費用科目」と定義付けられているため、損金として計上することができます。
たとえば、法人が役員や従業員の健康維持のために、スポーツクラブの会費を支払うとその金額を福利厚生費として扱うことができます。
他にも、福利厚生費に計上できるものとして、コンサートや演劇などの美術鑑賞、健康診断の費用、社員旅行、社内で行うレクレーション費などが挙げられます。
なお、これらの費用を福利厚生費として経費に算入させるには、一定の条件を満たす必要があります。
福利厚生費として認められるための3つの条件
- 社内規定を整備しておくこと
- 社員全員を対象としていること
- 社会通念上で適当と思われる金額であること
3つ目に挙げた、「社会通念上で適当と思われる金額であること」に関しては、明確な金額設定があるわけではありませんが、税務局にその内容を合理的に説明できるかどうかが重要となります。
また、これらの規定を1つでも違反している場合には、福利厚生費として損金算入することが出来なくなってしまうので気を付けましょう。
9.社長(または家族)所有の不動産を法人に貸付する
少し特殊かもしれませんが、役員(社長)やその家族が所有している不動産を法人が使用し、賃借料を法人から社長などの個人に支払う形にすると経費にすることが可能です。
また、法人から賃貸料を受け取った個人は不動産所得の扱いとなるので、こちらも経費扱いにできます。
(固定資産税や損害保険料などへの充当)よって、この税金対策のメリットは不動産を貸す方も借りる方も税金対策につながることです。
10.別会社を設立する
収益を上げている企業が、子会社を設立して税金対策を行っているというのは、聞いたことがある経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
以前のように、法人設立に必要な資本金の最低額は無くなりましたので、法人設立のハードルは下がりました。
既にある法人が、別会社(=子会社)を設立することで数多くの税制上のメリットを得ることができる可能性があります。
簡単に例を挙げると、資本金1億円以下の法人ならば、年間800万円以内の所得については法人税や事業税が軽減されます。
さらに、資本金1億円以下の法人は交際費が年間800万円までであれば全額経費にすることもできます。
この他にも様々なメリットがあり、経営の意味合いからも法人が別会社を持つことはリスク管理の一つにもなります。
ただし、合理的に考えて別会社の設立が必要でないと判断された場合や、親会社の関わり方が常識的でないと判断された場合などには、税務署から否認を受ける可能性があることにも注意しましょう。
- 資本金1憶円以下の法人の場合、年間800万円以内の所得については税金が軽減
- 資本金1憶円以下の法人の場合、年間800万円以内の交際費であれば、全額経費として認められる
11.中小企業向けの共済に加入する
中小企業向けの共済として、主に「中小企業退職金共済」「小規模企業共済」「経営セーフティ共済」の3つが挙げられます。
どれも法人よりも小規模な個人事業主向けに設定されたもので、経営者あるいは従業員の退職金準備や会社の事業資金として活用されています。
また、共済へ支払う掛け金は法人税の課税対象から控除できるので、税金対策にも期待ができます。
取引先の倒産リスクに備える中小企業向けの「経営セーフティ共済」の場合には、毎月5,000円~20万円の間から5,000円単位で掛け金を設定することが可能です。
中小企業共済への加入は、節税対策以外に会社を守るための保障を手にいれることにもなるので、経営者であれば一度は共済への加入を検討しておくべきでしょう。
関連:「小規模共済の特徴とは?メリットとデメリットを徹底解説!」
12.法人向けの生命保険に加入する
最後に紹介するのは、法人向け生命保険への加入です。
実は法人保険の保険料は、全額または一部を損金として算入することが可能で、法人税の支払いを抑えることができます。
法人保険のメリットはこれだけではありません。
保険に加入すれば、当然手に入るものは保障です。法人保険は法人のための保険なので、その保障も個人とは違い法人の規模に合わせたものになります。
また、個人向けの保険とは違い法人保険の保険金は非常に高額です。経営者に万が一のことがあった際にも、資金を元手に手厚いサポートを受けられます。
他で紹介した税金対策とは違い、商品によりますが、保険解約時には解約返戻金を手にすることができることも法人保険の魅力の1つと言えるでしょう。
保険商品によっては、それまで支払った保険料以上を返戻金として受け取ることができるので、将来的に多額の資産を作ることができます。
注意点としてあげられるのが、法人保険解約時に受け取る返戻金には法人税が課せられます。
会社に合った保険商品を選ぶことや解約時の出口戦略を練らなければ、法人保険を効果的に運用することは難しいです。法人保険への加入を考える際には、まず税理士や保険代理店などで無料相談を受けることをおすすめします。
- 保険料を損金に算入することができる
- 副次的な効果としての税制上のメリットだけでなく大型な保障を得ることができる
- 保険金や解約返戻金を受取ることができる
まとめ
12個の税金対策を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
どの税金対策も、会社に本当に必要なものであるか、実施前にはあらかじめ税理士などに相談を行いましょう。
税金対策として法人保険が気になる方は、まずは人気の保険商品をチェックしましょう。
関連:法人保険で税金対策
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- 法人向けの損害保険に加入したい
- 決算対策として最適な法人保険を検討したい
- 経営リスク・事業継承に備えたい
- 退職金を準備したい
忙しくて自分で法人保険をチェックする暇がない、どんな保険があるのか調べるのが面倒。そういった経営者の方に向け、法人保険や税の専門知識をもつ保険のプロが、本当に最適な保険を選ぶための力になります。
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