相続・事業承継
事業承継の必要性と成功方法

事業を次世代に引き継ぐために

事業承継

事業を次世代に引き継がせるための「事業承継」ですが、きちんと準備を整えて必要な対策を取っておくことが肝心です。

事業承継対策をしない場合には、さまざまなデメリットも発生してしまいます。具体的な事業承継の手順や生命保険の活用法について見ていきましょう。

早めに対策を取ることによって、後継者が円滑に引き継ぐことができ、経営者自身も安心して引退をすることができるのです。

スムーズに事業承継を行うときのポイントについて、詳しく解説していきます。

経営者の課題である事業承継対策のデメリットとは

後継者を誰にして、どのような引き継ぎ方をするかといった事業承継対策は早い段階から取り組んでおく必要があります。対策が遅れてしまうと、事業承継そのものが難しくなってしまうことがあるからです。

事業承継には約5年~10年といった期間が必要となるため、あらかじめ計画を立てておくことが大切でしょう。承継のための期間が不十分なままだと、代替わりをしてからも自らが経営権を握ったままの状態になってしまい、経営に支障をきたしてしまうこともあるのです。

いつまでも会社への影響力を残したままでは、後継者も自由な経営をすることができなくなり、将来的に経営そのものがうまくいかなくなってしまう可能性もあります。

特に中小企業の場合では、ワンマン社長として経営者が長い期間、会社経営に携わっている場合が多いでしょう。会社や事業への強いこだわりがあるからこそ、なかなか後進に譲れないといった面もあるものの、まずは引退のタイミングをよく見定めておく必要があるのです。

業種や会社規模によって異なる部分もありますが経営者の平均的な引退年齢は、67歳~70歳となっています。したがって、60歳を迎えたときには事業承継の準備に取りかかる必要性が出てくるでしょう。

事業承継を先延ばしにしてしまっても、最終的にはどこかのタイミングで引き継がなければならないため、まずは事業承継に対する理解を深めておくことが大切です。

後継者不足問題

事業承継を阻むひとつの問題として「後継者不足」があげられます。会社や事業を別の人間に引き継がせようとしても、なかなか適切な人材を見つけられなければ、引退したくてもできないといった状態に陥ってしまいがちです。

ただ、親族や従業員ばかりに引き継がせるだけが事業承継というわけではありません。

商工会議所などを通じて後継者候補を探してみたり、従業員の雇用維持などを条件としてM&Aを活用したりする方法もあるのです。事業承継を円滑に行っていくためには、さまざまな選択肢をあらかじめ用意しておくことが大切でしょう。

ひとつのプランにこだわり過ぎてしまうと、いつまで経っても事業承継が進まずに、経営者がずっと働き続けなければならないといった状態が生まれてしまいます。

後継者が見つからないから廃業するという選択を取る前に、柔軟にあらゆるプランを検討してみましょう。

事業承継に関連した問題

また、事業承継は相続などの問題も絡んでくるため注意が必要です。株式会社の場合であれば、事業承継を行うためには後継者に自社株を購入してもらう必要があり、そのための資金を用意しなければなりません。

早い段階で事業承継を行うのであれば金融機関への相談にも時間をかけられますが、対策が遅れてしまうと資金面で行き詰まってしまう可能性もあるでしょう。

特に資金面では贈与税や相続税対策、事業承継に伴う資金繰りの悪化を防ぐための対策など、まとまった資金が必要となります。会社に債務がある場合には、整理しないまま後継者に任せてしまうと、後継者の負担が大きくなってしまうでしょう。

後継者に代替わりをすることで、金融機関の融資条件が厳しくなったり、取引先から支払い条件の変更を求められたりすることもあります。

また、事業承継に時間をかけていないと役員や従業員の理解が得られなかったり、事業を長く続けるための環境づくりができなかったりするでしょう。

後継者候補が本当に経営者としての資質や能力を備えているのかの見極めも不十分になってしまいます。そして、親族に会社を譲る場合には相続のバランスを取る必要もあるのです。株式会社の場合では相続財産のほとんどが自社株というケースもめずらしくありません。

そのため、後継者に経営権を譲る形で自社株の大半を与えてしまうと、ほかの親族の不満が溜まってしまうということもあるでしょう。家族間の理解を得るためにも、早めに事業承継について考えておくことは重要なのです。

思いたったら実践!事業承継対策の準備

事業承継の準備に取りかかるのは、早いに越したことはないと言えます。自社が抱える課題を洗い出し、財務状況を確認して事業承継の具体的なスケジュールを立てて実行するには、それなりの期間を必要とするからです。

事業承継をスムーズに行っていくためには、きちんと手順を踏まえていくことを意識しましょう。

まずは、後継者候補となる人物とよく対話していくことを心がける必要があります。後継者のアイデアや意見も取り入れながら、経営者として必要なことを教えていきましょう。習熟度を確認しながら、段階的に経営権を移譲していく流れを作ることが大切です。

会社の財務状況や事業に対する評価を行っていくことも、事業承継には欠かせません。経営者自身が個人の資産を会社に貸し付けている場合には、精算してきちんと分けるようにしましょう。

また、経営者の個人保証によって会社の事業資金を借りているときには、金融機関などに相談に行く必要があります。金融機関によって対応は異なるものの、早めに相談をしておけば個人保証を外してくれるケースも多くあるのです。

さらに、自社が行っている事業が将来性のあるものであるかの見極めも重要になってきます。不採算部門は整理して、できるだけ後継者の負担にならないような環境作りを整えていきましょう。

経営者の引退後の資金を確保したり、後継者に経営権を移譲させるために自社株を買い取ってもらったりするためには、自社株に対する評価も行う必要があります。自社の株式が高く評価されている場合には、引き下げ対策をとっておくことが大切です。

税理士などの外部の専門家の意見も交えながら、他社に事業譲渡を行ったり、株式分割を行ったりしておきましょう。また、各種保険を活用して自社株の評価額を下げる方法もあります。

後継者が自社株を買い取りやすい環境を整えておくことが、事業承継においては重要なことなのです。

事業承継計画を立てる

自社を取り巻く経営状況をしっかりと把握したら「事業承継計画」を策定するようにしましょう。具体的なスケジュールを練ることによって、手順を踏みながら事業承継を段取り良く進めていくことができます。大切なポイントは「経営者が1人で計画を立てない」ことです。

事業承継はあくまでも事業を引き継ぐ後継者や従業員のために行うものですので、多くの意見を交えながら計画を立てていく姿勢を持ちましょう。できるだけ多くの社内の人間に携わらせることで、新しい経営方針や会社としての目標を徹底させていくことができるのです。

弁護士や経営コンサルタントのアドバイスも取り入れながら、しっかりと計画を立ててみましょう。

生命保険でも対策ができる!

事業承継対策には多くの資金が必要となるものの、生命保険を活用してみるのもひとつの方法です。一口に保険と言っても、個人契約の生命保険を活用したり、法人保険を活用したりする手段があります。

誰を後継者にして、どのような段取りで事業承継を行うかによって取るべき方法も異なってくるのです。親族に引き継がせる場合には相続の問題として捉えなければなりませんし、従業員に事業承継を行う場合には自社株を取得しやすい状況を作らなければならないでしょう。

生命保険の受取人

まず親族に事業承継をするときには、経営者自身が個人で生命保険に加入して、受取人を後継者にして資金準備をする方法があります。親族とは配偶者や子ども、孫や兄弟姉妹といった3親等内の血族であることが一般的です。

ただし、生命保険の受取人としてできるのは原則として2親等内の血族であり、3親等内の血族が認められるのは配偶者や2親等内の血族がいない場合に限られます。したがって、子どもの配偶者や甥や姪を後継者に指定したい場合には、養子縁組をして法定血族になってもらう必要があるでしょう。

ポイントしては、後継者が受け取ることになる生命保険金は相続財産にあたらない点です。したがって、法定相続人分や遺留分の対象とならないため、後継者に自社株取得のための資金を渡すことができます。

後継者に対して生前に自社株を贈与しておきたい場合には、株式の評価額を引き下げる対策を取ることが肝心です。「類似業種比準方式」と呼ばれる算出方法によって、同業他社と比較して自社株を適正な価格に算出し直します。会社利益を圧縮することで、株式の評価額を下げることができるでしょう。

会社の利益を圧縮する保険

そして、「逓増定期保険」や「長期平準定期保険」に加入するという方法もあります。経営者自身の退職金の準備にもなるので、メリットは大きいと言えるでしょう。

この2つの保険は高額な保険料を支払う必要があるものの、支払った保険料の2分の1を損金として算入できるため節税効果も期待できます。

保険料の支払いによって利益を圧縮することができるため、株式の評価額を抑えることができるのです。

逓増定期保険は保険料がとても高額であるため、会社利益の圧縮に効果を発揮します。5年~10年の契約期間の間で保険料の2分の1を損金として算入しながら、退職金の準備ができるというメリットがあるのです。

ただ、保険料がとても高額であるため、会社のキャッシュフローが悪化してしまうというリスクもあります。

引退をするタイミングをよく見定めながら、契約をする時期を考える必要があるでしょう。解約返戻金の受け取りと退職金の支給時期がズレてしまうと、大幅な黒字を計上してしまうことになるため注意が必要です。

その一方で、長期平準定期保険は20年~30年といった長い期間をかけて、事業承継対策として備えることができます。逓増定期保険と比べて保険料も比較的割安となり、保険料の2分の1を損金として算入することが可能です。

ただ、それなりに高額な保険料となるため、逓増定期保険と同様に、契約や引退のタイミングはよく見極めておく必要があります。

いずれにしても、後継者が自社株をきちんと買い取れるように準備を整えておくことが大切です。法人保険の受取人を会社にしておくことで、事業承継をスムーズに行うことができるでしょう。

【関連】

逓増定期保険の特徴とメリット

長期平準定期保険とは?

事業承継は事前準備が非常に大切

円滑に事業承継を行っていくためには、事前準備が何よりも大切です。後継者の選定から事業承継を完了させるまでには5年~10年程度の期間を必要とします。事業承継対策に十分な時間を取れないままでいると、経営者自身も引退のタイミングを逃してしまう恐れがあるでしょう。

後継者の育成が十分でないと、不安な気持ちからいつまでも会社に影響力を与えてしまうかもしれません。後継者に代替わりをしてからも、経営権を完全に移譲できない状態が続いてしまっては、後継者も動きにくい状況が生まれてしまいます。

経営者自身や後継者、従業員や取引先が納得できる事業承継を行うためには、早い段階で引退のタイミングを見極めておく必要があるのです。引退時期を明確にすることによって、事業承継の必要性を感じることになるでしょう。

そして、後継者ができるだけスムーズに経営の舵取りができるようにするためにも、自社を取り巻く経営環境を把握しておくことが肝心だと言えます。事業に対する将来性や自社の強み、財務状況や取引先との関係などです。不採算部門や会社の債務をできるだけ圧縮しておくことで、後継者が成功しやすい環境を整えてあげられます。

また、事業承継には多くの資金が必要となるので、そのための準備を整えておくことも大切です。後継者が経営権を握るためには、自社株を取得する必要があります。しかし、自社株を購入するだけの資金がない場合には、生命保険や法人保険を活用して資金の目途を立てておくようにしましょう。

保険料の一部は損金として算入できますし、経営者自身の退職金の準備にもつながります。後継者が自社株を取得しやすいように、株式の評価額を下げておくことも意識してみましょう。

税理士や弁護士などの外部の専門家の意見も交えながら、事業承継計画を立てていくことが大切です。そして、何よりも後継者との対話を大事にして、スムーズに事業承継を行えるようにしましょう。

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