損害保険
海外PL保険とは?補償内容や選び方を詳しく解説

海外PL保険の基本と補償内容を確認!選び方やおすすめの保険会社を解説

海外PL保険とは?補償内容や選び方を詳しく解説

海外へ自社製品を輸出する際に検討したいのが、海外PL保険への加入です。

海外、特にアメリカは訴訟リスクが非常に高く、PL対策は必須といえます。

本記事では、海外PL保険の基本から補償内容、保険商品を選ぶときのポイントまで解説。

実際に起こった海外のPL訴訟事例や、おすすめ保険会社も紹介するので、安心して海外事業を展開したい方はぜひご確認ください。

海外PL保険の基本と国内向けとの違い

海外PL保険の基本と国内向けとの違い

PL保険(生産物賠償責任保険)とは、自社で製造した製品が人や財物に危害を与えたとき、損害賠償金を補償する保険です。その中でも海外PL保険は、文字通り海外のPL事故に特化しています。

通常、国内向けのPL保険は海外に対応していないため、外国でのPL事故に備えるときは海外PL保険へ加入します。

海外はPLリスクが桁違い!保険による備えの重要度が高い

海外のPL事故は賠償金額が大きいうえ、国や地域によって法律や慣習が異なります。

特にアメリカでは、被害者が訴訟費用を負担せずに訴訟を起こせるので、PL訴訟頻度が高く賠償金額も高額です。

また、海外の訴訟に対応するためには、地元の有能な弁護士を確保する必要があります。そのためには、資金と現地のネットワークは欠かせません。

上記のような事情から、海外へ製品を輸出する日本企業は、PLリスクへの備えが重要となります。

海外のPL訴訟事例

実際に海外で起こったPL訴訟事例を、3例紹介します。

訴訟内容や多額の損害賠償金などを含めて、補償の重要性を確認しましょう。

事例①室内暖房器具から火が燃え移り逃げ遅れた家族が死亡

カルフォニア州在住者が室内暖房器具を使用したまま就寝したところ、付近に置かれていた衣類に燃え移って自宅が燃焼し、逃げ遅れた家族が死亡した事例です。

原告は家電メーカーに対して製造物責任に基づき、損害賠償を請求しました。

陪審は室内暖房器具について警告・表示上の欠陥があったとして、家電メーカーに対して合計約5,900万米ドル、日本円で約88億円(1ドル149円で換算)の損害賠償責任を認めています。

事例②子どもが綿棒で耳掃除をして大ケガを負う

5際の子どもが自分で綿棒のケースを開けて耳掃除をしたところ、鼓膜が破れたうえ耳の骨を脱臼する事故が発生しました。

両親はメーカーに対して子どもが扱えないように警告表示をして、ケースが開けられないような構造にすべきと主張。

裁判ではメーカーの責任が認められ1,550,000米ドル、日本円で約2億3,000万円(1US $149円で換算)の損害賠償金が命じられました。

事例③転売されたマッサージチェアで火災が発生

日本製のマッサージチェアが何者かによって台湾に転売され、その後マッサージチェア付近の柱が燃えて住宅火災が発生した事例です。

住人は日本のマッサージチェアメーカーに対して、1億円の損害賠償請求を請求。一審では、メーカーに対して760万円の遅延損害金の支払い命令が出ます。

この事例では、転売品による損害をメーカーが賠償した形であり、間に第三者が入っても企業の賠償責任が生じることを示しています

海外PL保険の主な補償内容

海外PL保険の主な補償内容

次に、海外PL保険の具体的な補償内容をお伝えします。

ただし、細かい補償内容は契約プランによるため、実際に契約するときは保険会社にしっかり確認しましょう。

対人・対物補償

対人・対物補償は、海外PL保険の基本的な補償です。

前述した通り、海外(特にアメリカ)はPL訴訟を起こされやすく、損害賠償金も非常に高額になります。

補償なしでPL事故を起こしてしまった場合、それだけで経営が傾くことにもなりかねません。

国内よりも万が一のリスクが高いため、PL保険に加入して備えておきましょう。

訴訟対応費用補償

訴求対応費用補償は、現地での訴訟費用や弁護士費用などが補償されます。

海外のPL訴訟は、訴訟費用が賠償金額に相当するほど高額なことも珍しくありません。

訴求対応費用を損害賠償と別枠で備えることで、金銭的リスクを最小限に抑えられます。

リコール費用補償

リコール費用補償では、海外でリコール措置を講じるために要した費用の一部を補償してもらえます。

同種の連鎖クレームを防ぐためには早めのリコール措置が重要ですが、リコール費用補償があれば迅速な対応が可能です。

海外PL保険を選ぶときのポイント6つ

海外PL保険を選ぶときのポイント6つ

海外PL保険を選ぶときのポイントは、以下の6つが挙げられます。

  1. 補償の適用地域
  2. 支払限度額
  3. 補償内容と特約
  4. 補償の発動要件(トリガー)
  5. 免責事項
  6. 訴訟費用の補償方法

それぞれ解説するので、PL保険加入時の参考にしましょう。

①補償の適用地域

海外PL保険を選ぶ際は、まず補償の適用地域を確認しましょう。

必要な地域に絞ることで、余計な保険料の支払いを避けることが可能です。

商品にもよりますが、適用地域は「日本を除く全世界」、「日本・北米・欧州・豪州を除く全世界」などに分かれます。

海外PL保険では国内PL事故は補償されないので、国内で事業を行う場合は忘れずに国内PL保険にも加入しましょう。

②支払限度額

支払限度額(補償金額)は、自社のビジネスリスクに合わせるのが基本です。計算は、基本的に保険会社のほうで行ってもらえます。

ただし、海外の取引先から支払限度額は○○円以上と、条件を指定されるケースもあります。

③補償内容と特約

補償内容と特約は保険商品によって異なり、その内訳次第で保険料と補償の充実度が変わります

事前に確認しておかないと、万が一PL事故が起こっても、「補償されない」「保険料がムダになった」という事態に陥るかもしれません。

基本プランでどこまで補償されるのか、どのような特約があるのかを確認して、自社にマッチするプランを組み立てましょう。

④補償の発動要件(トリガー)

海外PL保険の発動要件には、「クレームズメイド方式」と「オカーレンス方式」という2つの補償形式があります。

クレームズメイド方式は割安ですが、保険期間終了後に損害賠償請求をされると補償外となります。

一方、オカーレンス方式は保険料が割高ですが、補償判定を事故発生時点で判断するため、損害賠償請求が保険期間後になっても補償されます

補償方式 内容 保険料 注意点
クレームズメイド方式 保険期間中に損害賠償請求が行われた時点で保険の対象になる。損害賠償請求ベースとも呼ばれる 割安 遡及日以前の事故は補償対象外、保険契約終了後に損害賠償請求を受けても保険対象外になる
オカーレンス方式 保険契約期間中にPL事故が発生すれば契約解除後に損害賠償請求を受けても保険の対象になる。事故発生ベースとも呼ばれる 割高 保険開始日以前の事故は補償対象外、損害賠償請求が保険期間終了後に行われた場合でも事故の時点の保険条件が適用される

なお、北米や欧州の販売会社から海外PL保険の加入を要請される場合は、一般的オカーレンス方式を指定されます。

⑤免責事項

海外PL保険で、保険金が支払われない事項を確認することも大切です。

例えば、故意によって生じた賠償責任、地震や津波などに起因するPL事故では賠償責任が補償されません

保険商品のパンフレットや約款にしっかりと目を通して、補償範囲を確認しておきましょう。

⑥訴訟費用の補償方法

訴訟費用の補償は、「費用外枠払い」と「費用内枠払い」の2種類から選ぶことになります

訴訟費用の種類 内容
費用外枠払い 損害賠償金が支払限度額まで補償され、訴訟費用を合算しない
費用内枠払い 損害賠償金と訴訟費用の合計額が支払限度額まで補償される

費用内枠払いは訴訟費用だけで支払限度額を使い切る可能性があり、仮にオーバーした場合は訴訟費用を自己負担しなければなりません。

そのため、基本的には費用外枠払いがおすすめです。

海外PL保険の保険料相場はどのくらい?

海外PL保険の保険料相場はどのくらい?

保険料は売上高を基準に算出され、補償の対象の生産物や支払い限度額などによって変わります

一律の保険料相場はないので、加入前にきちんと確認することが重要です。

一例として、三井住友海上の「ビジネスプロテクター(海外輸出用)」では以下のようになっています。

対象生産物 仕向地別売上高 引受条件 保険料
プラスチック製品 北米:1億円
アジア:34億円
支払限度額:5億円 1,743,000円
食料品 欧州:3億円
アジア:2億円
支払限度額:2億円(製品回収費用限定補償特約セット) 601,000円
電子部品 国内売上高:3億円(輸出額・仕向地不明) 支払限度額:1億円 249,600円

参照:三井住友海上|ビジネスプロテクター(海外輸出用)保険料例

支払限度額1億~5億の補償に対して、保険料は25万~170万となっています。

おすすめの海外PL保険会社3選

おすすめの海外PL保険会社3選

ここからは、海外PL保険を展開するおすすめの保険会社3選を紹介します。

気になる保険商品があったら、ぜひ見積もりを取ってみましょう。

おすすめ1.東京海上日動

東京海上日動の海外PL保険は、グローバルビジネスを取り巻く海外でのPL訴訟リスクから自社を守ってくれます。

訴訟対応費用も保証され、長年蓄積したデータに基づいた有能な弁護士や通訳者などを選任してくれるので、安心して海外事業を展開できます

また、オプションでリコール費用補償がつけられ、予算に合わせた選択が可能です。

数多くのPL訴訟対応実績と、PL訴訟に強い弁護士事務所とのネットワークにより、自社の海外展開を力強くサポートします。

おすすめ2.AIG損害保険

AIG損害保険は、海外賠償専門チームが国際的な損害サービスネットワークを持つ保険会社です。

損害保険部門において全米有数の規模を誇ることから、独自の訴求マネジメントを活かしてPL事故のダメージを最小限に抑えられます。

またAIG損害保険の海外PL保険は、リコール費用補償が自動的に付帯されるのも嬉しいポイントです。

保険金は【生産物回収費用 – 1,000米ドル(免責金額)】 ×  90%で算出され、生産部回収の開始日から1年以内が対象になります。

おすすめ3.三井住友海上

三井住友海上は海外PL保険として、「ビジネスプロテクター(海外輸出用)」を提供しています。

不良完成品・不良製造品(加工品)の損害を補償し、リコール費用補償の選択も可能です。

売上高が50億円以内の場合は、直接輸出せず仕向地や輸出額が把握できなくても加入できます。

万が一海外でPL事故が起こっても、現地の法制度を熟知したクレームエージェントや弁護士が対応してくれるので安心です。

まとめ

まとめ

海外PL保険は、国内向けとは異なり補償の高額さが特徴です

言い換えれば、それだけ海外でのビジネスはリスクが高いことを意味します。

本記事を参考に海外PL保険を選び、万全の備えを持って海外事業を展開しましょう。

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