企業経営を行っていれば、法人税や法人事業税、法人住民税などの多くの税金を支払う必要があります。
月末や決算期に多額の法人税の支払いが押し寄せると「なにかいい裏ワザのような税金対策の方法はないものか」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。
しかし、法人税の支払いを回避したいからと言ってむやみに税金対策を行えば、会社の資産を目減りするリスクを抱えてしまいます。
では、効果的な税金対策とは、いったいどんなものが挙げられるのでしょうか。
ここでは、税務上で認められている税金対策をデメリットも併せ、詳しく解説していきます。
不必要な物を購入するのは本当の意味では税金対策ではない
そもそも税金対策とは、税制上のシステムを活用し、無駄を省いて適切な税金額を支払うようにするということです。
この税制を守らず、法人税の支払いを逃れようとするのは脱税行為であり、犯罪です。脱税行為は、法律の範囲内で支払う税金を少なくする税金対策とはまったく異なりますので注意しましょう。
税金対策をするには、主に2つの税制システムを活用することになります。
控除の利用
1つ目は、控除の利用です。控除とは、収益から一定の金額を差し引くことで、課税対象となる所得金額を減少させる方法です。
控除には、様々な項目があり、所得に適用される基礎控除、生命保険料控除、小規模共済等掛金等控除などが挙げられます。
ただし、会社の運営状況によっては利用できる控除は限定されており、大きな税金対策効果が得られない場合もあります。
損金を計上
2つ目は、損金(費用)を計上して会社の所得金額を減らすという方法です。
特に法人の場合は個人事業と比較して、損金計上できる費用の種類が数多くあるため、税金対策効果を得られやすい方法だといえるでしょう。
しかし、無計画なまま費用計上を行うと、会社の資産を減らす可能性も持っています。
たとえば、「会社の収益にかかる税金を少しでも安くしたい」と思い、不必要な設備投資を行ったとします。設備投資をして税金を抑えることができたものの、生産性には何も影響を及ぼさず、収益を向上させることはできませんでした。
このような状況になると、法人税を減らすために会社の資産を減らしただけになってしまいます。
重要なのは、会社の利益を高めながら税金対策を行うことです。正しい方法で税金対策効果を図ることが大切だということを意識しましょう。
それでは、さっそく法人税の税金対策効果がある8つの方法をご紹介します。
社員のために福利厚生費を捻出する
こちらの税金対策は、社員のモチベーション向上に繋がるものです。
福利厚生費は、税法上でも「役員・従業員の福利厚生を目的として、給料・交際費以外の間接的給付を行うための費用科目」と定義付けられているため、損金の計上ができます。
たとえば、役員や従業員の健康維持のため、スポーツクラブの会費を福利厚生費として扱うことができます。
また、コンサートや演劇などの芸術鑑賞の機会を従業員に与え、新しい経験をさせて仕事のモチベーションを向上させることも福利厚生として扱うことが可能です。
さらに、健康診断費や従業員の旅行、レクレーション費も福利厚生費に入れることができます。
なお、福利厚生費を経費として算入するためには一定の要件を満たさなくてはなりません。
福利厚生費として認められるための3つの条件
- 社内規定を整備しておくこと
- 社員全員を対象としていること
- 社会通念上で適当と思われる金額であること
の3つです。
3番目の「社会通念上で適当と思われる金額であること」に関しては、明確な金額設定があるわけではありませんが、税務局にその内容を説明できるかどうかが重要となります。
なお、これらの規定を1つでも違反している場合には、福利厚生費として損金算入することが出来なくなってしまうので、気を付けましょう。
出張日当を支給する
企業の事業内容により、社員の出張などが多い場合、食費や日用品費等がかかることになります。
しかし、これらの費用は経費として落とすことができません。
したがって、出張の多い従業員個人に対して給与を多く支給するという企業もあることでしょう。
その場合、給与の額を増やすのではなく、旅行規程を作成して出張日当として社員に支給する方が税金対策効果の高い方法だと言えます。
旅行規程では、「出張先までの距離」「出張する人の職務上の地位」などによって支給できる金額を設定することが可能です。
そのため、出張にかかった実費よりも多い金額を支給することも難しくありません。また、出張手当という項目をつくることができるため、経費をより増やせるようになります。
出張手当とは、出張した社員の支出を補てんするための項目です。
出張先での支出を個人に負担させないようにすることで、社員側の負担もなくなりますし、経費計上によって税金対策が行えるまさに一石二鳥の方法だと言えます。ただし、企業で旅行規程を作成していない場合は経費として認められない可能性があります。
なお、旅行規程の作成時には気をつけるべきポイントがあります。
まず、旅行規定の目的について明確にしておくことが必要です。「役員もしくは従業員の出張時の料費支給について」のように何の目的で作成した明確にします。
さらに、出張既定の対象は従業員全員にしなくてはなりません。
もし、役員のみに限定した場合、税務署に役員の所得として見なされる可能性があるため、経費計上できなくなってしまいます。また、出張の定義について距離で判断するのか場所で判断するのかについても決めなくてはいけません。
役員報酬を適切な金額に設定する
税金対策でまずやっておきたいのが役員報酬の設定です。役員報酬とは、いわゆる経営者の給料です。
そもそも、役員報酬は損金として算入ができません。
損金として算入するには一定の条件を満たし、なおかつ所定の手続きを踏む必要があります。
まず、役員報酬を損金に算入するためには「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」のどれかに該当しなければなりません。ただし、利益連動給与については中小企業で利用することはほぼないものです。
まず、「定期同額給与」とは支給時期1カ月以下の一定期間に支給される給与で、事業年度内の各支給時期の給与額がすべて同額であるという条件を満たしたものを言います。
たとえば、毎月必ず100万円の報酬を支払うときは、定期同額給与になるので損金算入が可能です。
しかし、役員報酬が常に一定ということは難しいです。業績が良ければ上げることもありますし、逆に悪くなると下げる必要も出てきます。そのため、役員報酬の改定があった場合でも損金算入が可能です。
損金算入ができる改定については3つあります。
1つ目は「通常改定」といい、期首から3カ月以内に改定した場合に認められるものです。
2つ目は「臨時改定事由による改定」です。これは、職務上の役員の地位変更といったやむをえない状況のときに行われます。
3つ目は「業績悪化改定事由」といい、会社の業績悪化が原因で改定を余儀なくされたなどの理由で改定する場合のことです。
3つ以外では、改定後の損金算入は認められませんので注意が必要でしょう。
次に、事前確定届出給与です。事前確定届出給与は、所定の時期に確定している給与を支給することを定め、それに基づいて給与を支給するものです。
なお、損金算入をするためには事前確定届出給与事業開始年度から3カ月以内に役員報酬を決定し、事前確定届出を所轄税務署長に届ける必要があります。
人材の確保や広告宣伝費として将来の投資に回す
会社が持続的に成長を遂げていくためには、「有力な人材を確保して教育すること」「企業のブランド力を強化すること」が必要になります。
したがって、自社を売り込むための手段を講じなければなりません。
自社を売り込む方法として、会社紹介のパンフレットの作成や求人広告、自社製品の売り込みを目的とした広告宣伝活動などがあります。
これらを行うときには、広告宣伝費として費用が必要です。しかし、広告宣伝費も費用として計上することができます。
したがって、将来会社を背負う人材の発掘、自社の製品やサービスを流通させるためにお金を使うことで、税金対策をしながら会社の成長を促すことができるのです。
また、支払いの時期などを会社で設定しやすいというメリットがあります。つまり、決算ギリギリになっても経費として計上しやすいということです。
もし、決算の時期になり予想以上に利益が出た場合は、広告宣伝費で経費計上すれば帳尻合わせをすることも可能になります。税金対策の最後の手段として準備しておくと良いでしょう。
会社の利益を残すことは、今後の運営のためには重要になるかもしれません。ただし、会社を長く存続させるには人と会社を育てるためにもお金を使う必要が出てきます。
利益を内部留保するよりも、会社の将来的な成長につながる部分に投資をしていくという心構えは、会社の成長と税金対策の2つの効果を得るためにも必要だといえるでしょう。
中古車を購入する
法人で自動車を購入することで、取得価格全額を1年間の損金に算入することが可能です。
自動車には、数十万から数千万もの値段がする車種があるので、「これぐらいの金額を損金として計上したい」といった時には、便利な税金対策だと言えます。
とはいえ、決算期に慌てて高級車を購入しても、自動車の減価償却費は月ごとに行われるので、その期は一ヶ月分の減価償却しか発生しません。
簡単な例を挙げると、価格120万円の中古車を決算月に購入した場合、その月時点では10万円分の税金対策しか行えないということです。
また、車を購入すれば当然、維持費や税金が発生します。こうしたメンテナンスの費用にもあらかじめ考慮が必要です。
不動産投資で税金対策をする
不動産投資も法人の税金対策法として取り上げられます。税金対策の仕組みとしては、建物部分の減価償却費を損金に算入するというものです。
より具体的に説明すると、不動産には土地部分と建物部分が存在しています。このとき、建物部分は時間の経過によって価値が目減りし、最終的に建物部分の評価額程度の損金が税務上に算入されます。
例えば5000万円のマンションを購入した場合、耐用年数5年とすると、1年間で1000万円の損金算入額が発生。1000万円の税金対策が5年間可能です。
なお、実際の年ごとの減価償却費用は、建物の耐用年数と償却率によって決まります。
また、赤字決算となってしまった場合には、不動産を売却することで利益調整を行えます。
黒字の際には、不動産売却益は法人税の課税対象となってしまいますが、逆に言えば法人の利益がマイナス時に不動産を売却することで会社の財政を健全に保つことが可能となります。
とはいえ、不動産投資による税金対策は多額の資金が必要となるので、事前に綿密なシミュレーションが必要となります。気を付けましょう。
経営セーフティ共済に加入する
税金対策の方法の1つに経営セーフティ共済への加入があります。
経営セーフティ共済とは「中小企業倒産防止共済制度」をより分かりやすい呼び名にしたもので、会社の連鎖倒産を防ぐための制度です。
自社が健全な会社運営をしていたにも関わらず、取引先が倒産してしまうという事例は少なくありません。
取引先が倒産してしまえば、それに伴って自社の経営状況も悪化します。場合によっては、倒産のリスクも考えられるでしょう。
そのような場合に経営セーフティ共済に加入していると、このような連鎖倒産を防ぐための貸付金を利用することができます。
経営セーフティ共済の掛け金は、毎月5000円~20万円、5000円単位で金額設定できます。
そして、経営セーフティ共済に加入する際に、支払う掛け金は必要経費に算入できるので税制上の優遇措置を受けられます。
つまり、会社の倒産リスクを回避しながら税金対策ができるということになるのです。
しかも、借り入れをする際は、掛け金の最大10倍まで利用することができるので非常に便利です。
また、12カ月以上の掛け金の支払いがあったときに解約すると、解約手当金が支払われます。
解約手当金は掛け金の支払期間が40カ月未満の場合、支払額が減額されるものの、40カ月以上になると掛け金の95%が返還されることになります。
ただし、解約手当金は益金として計上されるので事業所得扱いとなり、課税対象です。したがって、法人税が増加することになるので注意が必要です。
税金対策と保障効果!法人保険に加入する
「法人保険の加入が税金対策には効果的だ」と言われることがたびたびあります。これは、法人保険料の一部を、税務上で損金計上ができるためだからです。
そうはいっても、保険金受け取りは保険満期か、保障の対象になった場合だけではと思う方もいるかもしれません。
しかし、法人保険の場合、商品によって契約期間内に保険解約を行うと解約返戻金というものを受け取ることができます。
解約返戻金は、保険期間内で支払った保険料の総額に、各保険会社で設定されている解約返戻率を掛けると、その金額を算出することが可能です。
つまり、解約返戻率が100%を超えると、保険解約時には支払った保険料以上の金額が手元に戻ってくるということです。
保険料を損金算入させながら、資産の形成もできるので、税金対策の中でも優れた方法だと言えます。
しかし、保険料の損金算入割合や返戻率の値は、法人保険の種類や保険契約の内容によって変わります。
また、返戻率が100%になるまで、数年から20、30年ほどの期間が掛かることもあります。それまで保険料を支払い続けられるように、収益を維持する必要があります。
法人保険は、保険料の特性だけでなく、保障の効果を得られるのもメリットの1つです。特に中小企業の場合、内部留保している資産だけで、経営上に発生しうるリスクをすべてカバーできるとは限りません。
法人保険に加入をしている場合、数十万から数千万もの保障が利きますので、事業活動の幅も広がります。
さらに、法人向けの生命保険には、経営者のための高額保障がついた定期保険、従業員の福利厚生を充実にする養老保険、がん保険などがあります。
税金対策以外にも、事業承継対策や事業保障、退職金準備などに活用できるのが法人保険です。
加入をまだしていないという方は、1度どのような法人保険があるのか調べてみることをおすすめします。
裏ワザに頼らずに真正面から取り組んでいく
税金対策で重要なのは、税法上の規則に従って無駄な税金を支払っていないかを確認するという点です。
一般的に、裏ワザと呼ばれる税金対策は、税務局から脱税行為とみなされ、ペナルティを負うリスクがあります。
また、最終的な収益を目減りするために、経費の額を多く見せるのも問題です。
経費が増えれば、それだけ会社の資産も減り、今後の経営状況を悪くする原因になりかねません。対外的に見て会社の資産が少なすぎる場合、取引がうまくいかなかったり、金融機関からの融資も受けづらくなったりします。
今回こちらでお教えした税金対策も、合理的、経営上で妥当な理由がなければ、税務署からの否認は必至です。
一度否認を受けてしまえば、せっかくの税金対策も逆効果となってしまいます。
税金対策は、利益と費用のバランスを考えることが非常に重要です。法人税を減らすことだけに注目するのではなく、将来的な会社への投資のために、「その費用は、会社にどのようなメリットが得られるのか」を考えながら税金対策を心掛けるようにしましょう。
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